ユーラシア横断の旅とその報告展
石橋財団奨学金海外派遣プログラム 活動報告展開催
期間:2019/10/30~11/7(土日休み、月曜祝日開催)10:00-17:00
場所:東京藝術大学絵画棟210.211
アーティスト:本プログラムに参加した東京藝大の学生13名
リンク:出展映像公開しました
○Index
・挨拶〜今夏の僕の活動と報告展について
・旅のまとめと今後の展開
・展示アーカイブ
▼挨拶〜今夏の僕の活動と報告展について
今夏7月の終わりから10月の中頃にかけて、石橋財団の奨学金プログラムを利用してユーラシア横断の旅に出ていました。様々理由や動機はありましたが、いちばん大きいのは高校生の頃に読んだ沢木耕太郎の「深夜特急」の興奮が忘れられなかったことです。
長い道のりを終えまして非常に楽しくも過酷な、2度とできないだろう経験をさせてもらいました。この旅に対しては、現在エッセイを執筆中で、それをもって旅へのメインの制作物としようと思います。来春の発表を目指しています。
またそのほか、今回同じように奨学金プログラムで海外渡航活動をしてきた学生たちによる報告展が開かれまして、そこへも参加しています。
そこでは今後の制作につながるようなショートムービーを展示しています。11/7までですが、僕以外にはとても優秀な藝大の学生たちがそれぞれ海外へ行った痕跡を展示してあり、ただの報告展以上の見応えはあるかと思いますので、短い会期ですがご予定合いましたら是非お越しください。6日の水曜日には日中在廊しておりますので、機会に恵まれましたらお話ししましょう。(2019/11/2)
▼旅のまとめと今後の展開
旅はそう一本筋ではまとめられなくて、詳細な表現と記録はエッセイの方でやっていきたいと思うのですが、今後の自分の活動へどうつながっていくか、というところを一つ観点にして、簡単にまとめたいと思います。
日本を離れて地続きにユーラシアの国々を見てきて、その中で感じ考えた日本との類似点と差異から、僕は前よりももっと日本や自分自身のことを客観的にもう少しよくわかったように思います。まず、韓国中国香港といった東アジアの先進国は、経済の成長の中に人々の生活があることを、日本との類似点として感じました。韓国のKPOPは消費経済の上で発展していることを感じさせますし、上海や香港のアートギャラリーは極めてコマーシャルな臭いがします。中国の地方に散在している投資用マンションは中国経済を象徴するような景色だと言えるでしょう。
それが次に東南アジア、インドへと向かっていくと、一気に貧困という2文字へと移り変わっていくのです。それは例えば、おしゃれのあり方が、Tシャツにプリントされたブランドロゴからより物質的な貴金属類になっていくようなそういうような変遷があるのです。またもっと直接的には、僕は香港で様々あって一泊5000円の宿に泊まっていましたが、香港を出た次の夜、ベトナム国境沿いの町南寧では一泊200円の宿に泊まることになります。そういう日々を送っていると、お金の0の多さっていうのが一体何の意味があるのだろう、などとも考えてしまいます。
そしてヨーロッパに入ると、文化と歴史のありかたの違いをひしひしと感じるようになります。特にイタリアヴェネチアで僕はそれにうちひしがれます。例えば古くから今も使われている建物の大理石の階段が人々のステップによって緩やかなカーブを描いている様子や、真鍮のドアの取っ手の持ち手の部分ばかりがキラキラと輝いている様子は、過去から今にまで連綿と歴史と文化が続いていることを感じさせます。それはつまり逆説的に、日本の文化や歴史というのがいかに過去から分断されているか、というのを僕に強く印象付けました。ヴェネチアのカ・ペーザロ国際近代美術館には日本の見事な刀剣や浮世絵のコレクションも所蔵されていましたが、それがいくら見事で重厚で洗練されているからと言っても、僕らの現在からはラストサムライ的に強烈に分断されているのです。
以上の類似点や差異を経て僕が日本というものを改めて見直した時に、日本というのは歴史や文化の分断の後の大きな経済成長の中に存在しているということを体感的に理解することができました。もちろんそれは前から僕自身考えていたことではあったのですが、それを肌で感じるかどうかっていうのは、感覚的に随分違うものがあります。
もっと思い切った言い方をすれば、僕は旅以前まで西洋のアートというものが持つ幻想のイメージを随分引きずっていましたが、アートが実際に人々の中で生きている世界に直面した時、西洋アートというものの向こうのコンテクストや現代の話題っていうのが日本の持ち物ではない、そうはなりえないのだ、ということを体感して、自分のやるべきことに対して開き直ることができたのです。そして、それでは何が日本のもので僕がやるべきことなのかといえば、それはフィクションとテクノロジーの世界だと思いつきました。
海外でできた友だちとの話題には必ずと言っていいほど、日本のアニメーションの話が話題にのぼります。僕は畳ではなくフローリングの上で、ポケモンやジブリ映画を見て、ゲームをしながら育ちました。ゲームのハードもゲームボーイからDS、Wii、最近はVRへと、ソフトも2次元ドットから3Dポリゴンへと、そういった進化の真っ只中に晒されながら僕は生きてきました。
僕はそれを今の自分の、自分たちの、この日本の特異で面白いアイデンティティだと受け止めています。
そこから僕は今、VRを用いて、「フィクションの世界と人間の関係」をテーマに作品を制作しています。芸大も4年生となって残りわずか、迫る卒展に対して、そういった形でアウトプットしていく予定です。
リンク:出展した映像2本公開しました
▼展示アーカイブ
▼動画の一部シーン紹介
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