みんなパンを投げたがっていた

 2018年の芸祭期間を利用して、参加プロジェクト型、ハプニング形式の作品を設置しました。まっ白い布の綺麗に貼られた構造体と、それを汚し壊すための道具を用意し、来場者に開放しました。

 3日間の展示期間の中で展示空間には様々な行為や感情が記録され、興味深い空間が構築されました。


・作品の経緯とステイトメント

 フィジーのホテルでfish feedingという小さなイベントがありました。海辺で魚に餌をあげるものだと聞いていましたが、行ってみると予定の時間の3分遅れぐらいに恰幅のいいホテルスタッフが段ボールを持って海岸沿いまでやってきて、何が始まるのか思うと、彼はおもむろにダンボールの中身のげんこつ大のものを手にとって、遠投の要領で思いっきり海に向かって投げつけました。彼は続けて2つ目を投げました。それはおそらく朝食のあまりのパンのようでした。にわかにあたりがざわざわし始めて、彼に続いてやんちゃな男の子たちが投げ始めると、あたりの子供たちを中心にみんなが段ボールに群がり始めました。

 丸いブレッドはソフトボール投げのように、平たい食パンはブーメランのように、なるべく力強く誰もが海を目指してパンを投げていました。

 これほどまでに人間がパンを投げたがっていたとは、僕はそれまで知りませんでした。みんなパンを投げたがっていました。



 場と、きっかけや正当な理由があれば人は思っていたより異常なことをしたりします。毎年何千人もの人が来る芸祭の場で、そんな人間の姿を見てみたいと思って、場と道具を用意しました。

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